北海道・浦幌の畑でハマナスを育て始めてから、毎年欠かさず季節ごとの姿を見つめてきました。春のまだ冷たい風の中で芽吹く緑、夏の光を浴びて咲き誇る花、秋にかけての静かな実り。その一つひとつが僕にとっての大切な景色であり、暮らしそのものです。
毎年6月-7月になると、畑一面が鮮やかなピンクに染まり、甘く爽やかな香りが広がります。その光景は、いくら見慣れていても飽きることのない喜びで、「今年もまたこの季節が来た」と胸が高鳴ります。
けれども、2025年の畑は、いつもと違いました。気温の上昇が続き、さらにマイマイガの被害も重なって、花の数は例年に比べてぐっと少なかったのです。畑に立ち尽くし、あの広がりが見られない現実に、正直なところ落胆の気持ちもありました。秋の返り咲きも期待していましたが、今年はそれも望めないまま季節が移ろおうとしています。
自然を相手にしていると、どうしても「思い通りにはならない」という瞬間に出会います。丹精を込めても、天候や虫の影響を完全に避けることはできません。けれども、その厳しさを受けとめることもまた、この仕事の一部であり、自然とともに生きるということなのだと思います。
花が少なかった分、一輪一輪と向き合う時間が増えました。咲いた花を見つめると、その香りは例年よりも濃く、強く、深く心に残りました。数ではなく質に宿る恵み。自然はときに、「今年は数ではなく、一つひとつを大切に感じなさい」と語りかけてくれているようにも思えます。
日本には、四季の移ろいをそのまま受け入れ、その年その年の表情を愛でる文化があります。桜が一瞬で散る姿に儚さと美しさを重ねるように、ハマナスが少なかった一年もまた、その時にしか出会えない物語として心に刻んでおきたい。「順調に咲いた年」も「思うように咲かなかった年」も、すべてが自然から授かった大切な贈り物なのだと感じています。
この経験もまた、rosarugosa の物語の一部です。僕たちはただ花を育てているのではなく、自然と向き合い、その声を聞き、その恵みを暮らしへとつなぐ役割を担っています。そして、その年ごとの学びや気づきを香りや製品に込めて、皆さまへお届けしていくことこそが、僕たちの使命だと思っています。
自然は毎年同じ景色を見せてくれるわけではありません。けれども、そのゆらぎや移ろいがあるからこそ、驚きや感動、そして生きる力を与えてくれます。僕はこれからも、北海道・浦幌の畑でハマナスとともに歩み、自然の声に耳を澄ませながら、その瞬間にしか生まれない恵みを誠実に、丁寧にお届けしていきます。
どうか、この想いも含めてrosarugosaの製品を感じていただけたら嬉しく思います。森 健太