Column

心に咲く一滴

心に咲く一滴

銅の釜に手を添え、蓋をそっと閉じる。 まるで、花の声に静かに耳を澄ませるような時間が、ここから始まる。 朝摘みのハマナスは、しっとりとした重みとともに目を覚ましたばかりの香りを抱いている。一枚一枚、手で集めたその花びらを、静かに、ゆっくりと釜へと入れていく。 用いるのは「水蒸気蒸留」という、昔ながらの技法。蒸気の力で、花が本来もつ香りをやさしく引き出す。繊細な温度調整、そして気長に待つ覚悟がいる。焦らず、急がず、花の本質だけを一滴に映しとるための時間。 冷却を終えると、銅管の先からぽとり、ぽとりと雫が落ちはじめる。それは、ただのローズウォーターではない。北の大地の風、空、土、光——すべてがそこに、確かに息づいている。 肌に触れた瞬間、どこか懐かしい気持ちや、理由のない安らぎを感じるなら、それは、花の記憶が静かに語りかけているからだ。 ロサ・ルゴサという名のすべては、この一滴から始まった。

風の冷たさと、芽吹のぬくもりと

風の冷たさと、芽吹のぬくもりと

文|森 健太(ロサルゴサ代表) 春の訪れを感じ始めたある日、 まだ冬の名残をとどめた風の中で、 小さな新芽が静かに顔を出していました。 ロサルゴサの畑では、剪定や草刈りといった 一見、地味で根気のいる作業が続きます。 枝を切るたびに、 棘が指先にチクチクと刺さり、 何度も手を止めたくなるような、 そんな痛みもあります。 それでも、その先に咲く やわらかで力強いハマナスの花を思い描くと、 不思議と、心の中にぬくもりが灯るのです。 華やかさの裏にある、 静かな営み。 ロサルゴサの畑は、 機械に任せることなく、 すべて私自身の手で整えています。 枝ぶりを見て、風の流れを感じながら、 “今、この一枝に何が必要か”を見極める。 そうして芽吹いた小さな命が、 やがて花となり、香りとなり、 私たちの製品として、 誰かの肌と心を優しく包んでいきます。 風の冷たさと、芽吹きのぬくもり。 そのどちらも受け入れながら、 今日もまた、ロサルゴサの畑に立っています。

厳しい冬が生んだ、手を包むクリーム

厳しい冬が生んだ、手を包むクリーム

  実は、北海道は東西南北に大きすぎて、雪の降る時期が1ヶ月もずれたりします。写真は北海道の南部にいたスタッフが送ってくれた写真です。海辺に自生している、いわゆるこれは野生のハマナスです。     もう雪がしっかりと積もっているそうです。ハマナスは葉が枯れても、このように毎年、毎年、冬を越して、また花を咲かせます。     ロサ・ルゴサは香りだけではなく、”乾燥対策”に関してもこだわりがあります。北海道でつくられたロサ・ルゴサの地域性ですね。やはり北海道民が気になるのは、乾燥。冬の乾燥です。特に室内は暖房などの影響で空気は乾き、ドアノブに触る時は頻繁にバチ!っという静電気がよく走ります。(セーターなどの影響もありますが) ロサ・ルゴサ ハンドクリームはさらりとした使い心地と、保湿力の両方を合わせ持っています。北海道産のヒマワリ種子油、水分を補いながら潤いを保つナタネ油など、保湿効果の高い天然由来成分をたっぷり使用しています。硬めのテクスチャーですが、よく伸びて、ベタつきが少なく、うっすらとベールをまとうような不思議な使用感です。手の温度で優しくハマナスが香ります。少しずつ、全国でリピーター様が増えていて、本当に嬉しく思います。ぜひ、贈り物にもどうぞ! ■ハンドクリームの商品ページへ→

朝摘みローションミストと、ローション(化粧水)の違い

朝摘みローションミストと、ローション(化粧水)の違い

実は、全国の催事で出店した時、よくご質問いただくことが多い内容でした。ご説明が遅くなってしまい、大変申し訳ありません。 一番花だけを使用している朝摘みローションミストは、水分量が多めで髪や頭皮、顔だけでなく、全身に使用できます。 ローション(化粧水)は保湿力の高い成分や、精油を多く配合しているため、とろみが強くなっています。そのため、1本でしっかりと保湿をすることが可能です。もちろん、ハマナスの花から抽出したローズウォーターを使用しているため、香りも楽しむことができます。   ■ローション(化粧水)の商品ページへ ■朝摘みローションミストの商品ページへ

特別な夜明けと祈り

特別な夜明けと祈り

今年もハマナスは沢山、花をつけるだろうか。 茶色の割合が増えて、畑の雪が溶け始める。4月上旬。それが私たちにとっての1年の始まりです。5月の終わりまで、朝晩はまちがいなく寒くて、初夏と言っても北海道の夏は涼しいです。その時期になると春がはじまったばかりなのに、もう次の季節の始まりを感じます。この時期になるとそれまでは何もなかったハマナスの畑に緑が生い茂り、小さな蕾をつけるものもあります。北海道では、ハマナスは夏の訪れを知らせる花です。 北海道の浦幌町は、地図上では道東(どうとう)の海の近くにありますが、街と海の間には大きな山があります。そのため、浦幌町は山に囲まれた街となっています。私たちが育てるハマナスは、工房から車で10分程度の場所にあります。 夏の夜明け。私たちはその日、一番花を摘むために農園へ向かいます。草や木々には朝つゆが付き、薄明かりで光っています。ハマナスの花はこの時間まだ、眠っている状態。夜明けの花はまだ閉じているのです。 香りを深く、たっぷりと閉じ込めたハマナスの一番花が待つ農園。やっぱり今日だけは特別な気持ちです。日がのぼって花が開くと、ここはいつも風に乗ったハマナスの香りで満たされています。閉じた状態の花を一つずつ手で摘み取り、そのまま工房へ運び入れ、香りを抽出する作業が開始されます。 朝摘みローションミストは、この一番花の香りだけを使用しています。数量限定とはなりますが、その年その年の香りを楽しめます。しゅっ、と一吹きすればハマナスの香りが広がり、幸福感に包まれます。   最後に。 強く生きる、を支える。 これはわたしたちの原点です。始まりであり、そして立ち返るべき言葉でもあります。この言葉には、実は2つの意味合いがあります。 ハマナスが”わたしたち”の強く生きる、を支えてくれる。 わたしたちが”みなさま”の強く生きる、を支えたい。 わたしたち生産者は、わたしたちの志は、浦幌町のハマナスという自然に支えられています。そのことを胸に、みなさまの毎日に寄り添っていきたいと強く願っております。 そのひとときのスキンケアが、心やすらぐ特別な時間に生まれ変わりますように。ロサ・ルゴサとみなさまが末長く、共に歩んでいけますように。   ”朝摘みローションミスト”の商品ページへ⇨  

たくましさと艶をまとう香り

たくましさと艶をまとう香り

ハマナスの花の最盛期は、6月から8月。まだ朝晩が冷え込む5月ごろから葉を伸ばし、徐々に蕾がふくらんできます。  ハマナスは、日本のバラと呼ばれています。「rosa rugosa」は、ハマナスの学名のこと。ヨーロッパ系のバラとの違いは、大きさや花弁の数などさまざまですが、香りも個性があります。 ヨーロッパ原種のバラは、甘くてとろりとした華やかな香り。可憐で優雅な、ばっちりとおめかしをした人を思い起こさせます。 一方、ハマナスの香りは、みずみずしく、フルーツのような香り。たくましさと艶を兼ね備えた、素肌の美しい人がまとっているような香りです。 その香りは、畑に足を踏み入れるだけで、ふんわりと体をつつみこみます。花びらを一枚、近くに置いておくだけでも、その香りが空間いっぱいに広がり、ハマナスの花の中に入りこんだようです。 けれど開花時期は短く、色や香りの力強さからは想像できないほど短命。2〜3日で枯れてしまうのです。 少し触れるだけで花びらがはらはらと舞う様子は、散るというよりも、紅紫のみずみずしい色の粒がこぼれ落ちるよう。潔く散る花弁の構造は、北海道の短い夏を生き残る術なのかもしれません。

@rosarugosa_ciokay