ハマナスの収穫は、1日かけておこなわれます。収穫するのは、主に地元の女性たちの仕事。集められた花びらは、すぐに工房へ運ばれます。「rosa rugosa」の畑から工房までは、車で約10分。この近さも、ものづくりの鮮度を守るためには重要です。
工房では蒸留から納品までが行われます。
工房に到着してすぐ、ドーンと現れる、魔神が出てきそうな銅製の蒸留機。この形は「アランビック」と呼ばれています。使われ始めたのは、古代ペルシャの錬金術師たちだと言われているのだそう。「アランビック」とは、アラビア語で「蒸留器」の意味を指します。「rosa rugosa」の工房にあるアランビックは、ポルトガルから取り寄せたものです。
蒸留機は、銅製の他に陶器製や、ガラスもあります。なぜ「rosa rugosa」の工房では、銅製の蒸留機を使っているのかというと、焦げのにおいがつきにくいから。ハマナスの代名詞とも言える香りを、なるべく純度の高い状態でお届けしたいのです。
ちなみに、このアランビックが日本に入ってきたのは江戸時代のこと。焼酎などを蒸留する器具として製造・発展してゆき、陶器製の「らんびき」と呼ばれる蒸留機ができました。これは、のちに位の高い蘭学者のみが使うことのできる代物になったといいます。
畑から集めた花びらを蒸留機に投入し、ゆっくりと加熱。蒸留水とオイルを抽出します。
蒸留機にはメーターがないため、沸騰する音に耳を澄まし、蒸留水の水滴がぽつ、ぽつと落ちてきたら火の調整をします。その勘所は、何度も蒸留を経験しないと、なかなかつかめません。
花びらは冷凍保存するものと、蒸留するものに分けられます。「rosa rugosa」の工房では、だいたい毎日7〜8時間の蒸留時間で抽出をしています。その間で、みずみずしい香りのする蒸留水は、40リットルほどが出来上がります。
今後、ハマナスの畑を広げていくことも考え中。ですが、無理に人間の都合に合わせることはなるべくせず、ハマナスのリズムに合わせて、ものづくりを続けていきます。